サンシャイン

ホステルにニューヨーク出身の元警察官である黒人のサンシャインが住んでいた。

初めは廊下ですれ違うたびにお互い軽く挨拶をしていた程度だったが、

ある日バイトから帰ってくると彼女が僕の部屋のベットでアンパッキングをしている。何が理由で部屋が移動になったかは分からないが、普段ホステル内で何となく挨拶だけをしていた人といきなり同じ部屋になるのは一気にプライベートを見せるような感じがして最初が少し気まずい。でも長期間ホステルで生活していると、この現象は必ず起こる。

こうやって同じ部屋になってから話す機会が急激に増えた。

彼女はどれだけ外が暑くても必ずタイトなジーンズを着て、異様に反り上がっているつけまをつけ、頭には茶髪のウィッグが付いている。

性格、表情がキラッキラに明るくて、英語の発音が綺麗。もちろんアメリカ人だからっていうのもあるが、若者言葉を使ったり、省略したセンテンスを使わない。まるで教科書のCDを聞いているようだった。メイクが濃い。

話している物事一つ一つビシッと決めて責任を取るような言い方をしていて「警察官っぽいな」と思ったし、潔い感じがして会話が気持ちよかった。

「自分の生き方は決まっているし、男の助けもいらない」そう顔にでっかく書いてあるような立ち振る舞いだった。

ホステルの近くにピザ屋がある。

5ドルで片手で投げれるフリスビーほどの大きさのペペロ二ピッツァをテイクアウトすることができる。サクッとした耳にほんのりハチミツが塗られており、病みつきになって頻繁に通っていたのだが、サンシャインとそこでもよく会っていた。

「やっぱニューヨーカーはピザ屋に来るよな」

お店に入ると今日も彼女がいて、焼き上がるピッツァを待っていた。

他愛のない話をしてお互いのピッツァが焼き上がるのを待っていた。

「ニュージーランドの次、どこに行くのか」について話が盛り上がった。

旅人と話すと「次どこへ行くのか」大体この話題が出てくるんだけど、サンシャインとこの話を今までした事がなかったから、僕の方から気になって聞いてみたんだ。

「韓国に行くのよ!次は!」

旅人特有の「次の目的地の話になると目がキラキラする現象」をちゃんと彼女も持っていた。

30歳の女性が、暑苦しい男どもの部屋で一緒に寝なければいけないホステルという環境に住んで生活していくのは、正直精神的に辛いと思う。

そして今までの「ニューヨークで警察官をしていたサンシャイン」から「ホステル暮らしの旅人としてのサンシャイン」として生活をグレードダウンさせて踏み出すのはとても勇気が必要だし、自分の信念をちゃんと持っていないとできない行動であることは確かだ。

彼女のピザが焼き上がったのか、店員さんが叫ぶように彼女の名前を呼んだ。

焼きたての良い匂い漂う、ピザが入った四角形の段ボールの箱を片手で持ってきて僕の方へ戻ってきた。

「韓国は今までずっと行きたかったんだから!そこで働きながら生活をするの!私の生き方は私が決めるんだから!!」

そう言って彼女は熱々のピッツァを持ちながら僕に「じゃあね!」と言い残し外へ歩いて行った。

ニュージーランドを去った今、ふと彼女のインスタを見ると韓国で英語教師をしていた。